「シリーズ商品」の扱いについて
表示および広告チェック
こんにちは。
サニー行政書士事務所の岡村です。
ブログをご覧いただきありがとうございます。
今日は、よくいただくご質問のなかから、メイクアップ製品等でよくある「シリーズ商品(色調違い、香り違い)」における全成分表示上のルールと、製造販売届出上のルールについて解説します。
1.背景
リップスティックやコンシーラー、マスカラ、ファンデーション等のいわゆる「メイクアップ用化粧品」には、色調や香り違いで複数のバリエーションラインナップを持っている商品があります。
こういった商品を「シリーズ商品」と呼んだりしますが、場合によってはそのバリエーションが10種類とか15種類にも及ぶこともあり(特にリップスティック等)、そのバリエーション個々それぞれに異なる全成分表示が必要だとするとそのバリエーション個数分の異なるラベル版下を作成しなければならなくなりますし、その個数分の製造販売届出が必要になり、非効率です。
そこで、こういったシリーズ商品の場合、ある条件を満たせば、法定表示上の「全成分表示」情報を1本に統一化したり、製造販売届出を1件のみに統一化したりできるようになります。
2.香り違いの場合の例
仮の例を用いて説明します。
(下記の処方は、わかりやすくするためのあくまでも仮のものですのでご了承ください)。
【ハンドクリームA】
水 70.0%
パラフィン 10.0%
シア脂 8.0%
ステアリルアルコール 5.0%
グリセリン 3.0%
ホホバ種子油 2.0%
水添ヒマシ油 0.6%
フェノキシエタノール 0.6%
香料 0.8%
<全成分表示>
水、パラフィン、シア脂、ステアリルアルコール、グリセリン、ホホバ種子油、水添ヒマシ油、フェノキシエタノール、香料
【ハンドクリームB】
水 70.0%
パラフィン 10.0%
シア脂 8.0%
ステアリルアルコール 5.0%
グリセリン 3.0%
ホホバ種子油 2.0%
水添ヒマシ油 0.6%
フェノキシエタノール 0.5%
香料 0.9%
<全成分表示>
水、パラフィン、シア脂、ステアリルアルコール、グリセリン、ホホバ種子油、水添ヒマシ油、フェノキシエタノール、香料
(水添ヒマシ油、フェノキシエタノール、香料はいずれも1%以下なので、順不同のルールからハンドクリームAと同じ全成分表示が可能)
【ハンドクリームC】
水 70.0%
パラフィン 10.0%
シア脂 8.0%
ステアリルアルコール 5.0%
ホホバ種子油 3.0%
グリセリン 2.0%
水添ヒマシ油 0.6%
フェノキシエタノール 0.5%
香料 0.9%
<全成分表示>
水、パラフィン、シア脂、ステアリルアルコール、 ホホバ種子油 、グリセリン、水添ヒマシ油、フェノキシエタノール、香料
(ホホバ種子油とグリセリンはいずれも1%超なので、成分の表示順を変えなければならない)
厳密にいえば、ハンドクリームA,B,C共に、香料以外の部分で配合比率順に違いがあるので、個別に届出が必要、ということにはなりますが、実際にはAとBは法定表示情報の共通化が可能ですので、同じ販売名を用いたとしても大きな問題とはならないと存じます。
したがって、製造販売届出が最低限必須なのは、A(及びB)と、Cの2件、ということになります。
3.色調違いの場合の例
【リップスティックA】
ホホバ種子油 20.0%
トリエチルヘキサノイン 15.0%
マイクロクリスタリンワックス 14.0%
ミツロウ 12.0%
シア脂 10.0%
オリーブ果実油 9.0%
メドウフォーム種子油 6.0%
ジメチコン 4.0%
BG 2.0%
香料 0.5%
酸化チタン 4.0%
赤104 2.5%
赤218 1.0%
<全成分表示>
ホホバ種子油、トリエチルヘキサノイン 、マイクロクリスタリンワックス、ミツロウ、シア脂、オリーブ果実油、メドウフォーム種子油、ジメチコン、BG、香料、(+/-) 酸化チタン、赤104、赤218、黄4、酸化鉄
(色素は一番最後に、他シリーズで使用されるものも含め、may containとして一括表示が可能)
【リップスティックB】
ホホバ種子油 20.0%
トリエチルヘキサノイン 15.0%
マイクロクリスタリンワックス 14.0%
シア脂 12.0%
ミツロウ 10.0%
オリーブ果実油 9.0%
メドウフォーム種子油 6.0%
ジメチコン 4.0%
BG 2.0%
香料 0.5%
酸化チタン 4.0%
黄4 2.5%
酸化鉄 1.0%
<全成分表示>
ホホバ種子油、トリエチルヘキサノイン 、マイクロクリスタリンワックス、シア脂、 ミツロウ、オリーブ果実油、メドウフォーム種子油、ジメチコン、BG、香料、(+/-) 酸化チタン、赤104、赤218、黄4、酸化鉄
(may containはそのままだが、基剤であるシア脂、ミツロウの配合比率順が変わっているので、別の全成分表示が必要)
この場合は、リップスティックA,Bそれぞれでの販売名が必要(つまり製造販売届出は2件)になります。
4.まとめ
以上の内容をざっくりとまとめますと、
1)全成分表示において、配合比率1%超の基剤成分の記載順が異なる→個別に全成分表示が必要。
伴い、化粧品製造販売届出も、個別に届出が必要となる。
2)逆に1%以下の成分の記載順が異なる→順不同のルールやMay Contain表記ルールを活用して全成分表示の一本化が可能となるし、化粧品製造販売届出も「シリーズ商品(色調違い、香り違い)」として一本化できるようになる。
以上、ご参考いただけたら幸いです。