日本語成分表示名称のリストからの削除
その他、INCI名、日本語成分表示名称に関するお役立ち情報等
こんにちは。
サニー行政書士事務所の岡村でございます。
粧工連(日本化粧品工業連合会)からの通知によると、2020年3月31日をもって、以下の成分表示名称が粧工連のリスト(化粧品の成分表示名称リスト)から削除されるとのことです。
①イタドリエキス(対応INCI名なし)
②オトギリソウエキス(対応INCI名なし)
③セイヨウサンザシエキス(対応INCI名:Crataegus Oxyacantha Extract)
④ハマメリスエキス(対応INCI名:Hamamelis Virginiana (Witch Hazel) Extract
⑤ヒナゲシエキス(対応INCI名:Papaver Rhoeas Extract)
⑥ヤクモソウエキス(対応INCI名:Leonurus Sibiricus Extract)
⑦ローズマリーエキス(対応INCI名:Rosmarinus Officinalis (Rosemary) Extract
今日は、この粧工連による定期的な成分表示名称削除の理由について、その背景にあるINCI名の特徴などを踏まえながら解説したいと思います。
1.植物由来成分INCI名の特徴
現在、植物由来成分のINCI名は、基本的に以下の構成で出来ています:
学名+部位名+剤型名
粧工連も説明例として使用している「アマチャヅルエキス」を例に据えたいと思います(解りやすいので)。
アマチャヅルの学名はGynostemma Pentaphyllumなので、例えばその葉から抽出したエキスだと、INCI名は以下のようになります(実際にあります)。
Gynostemma Pentaphyllum Leaf Extract
しかしながら、ひと昔前は、植物部位の情報はINCI名に付されていませんでした。
伴い、かつてはGynostemma Pentaphyllum Extractで、定義として「葉エキスを想定する」という扱いがされていました。
したがって、植物部位をINCI名要素に入れることになってから、同じく「葉エキスを想定する」Gynostemma Pentaphyllum Leaf Extractも出来上がってしまい、すなわち
Gynostemma Pentaphyllum Extract と
Gynostemma Pentaphyllum Leaf Extract の両方が
「アマチャヅル葉エキス」を意味する、非常に紛らわしい状態が続きました。
2.「全草エキス」の登場
ところがそんな折、「全草エキス」を指すINCI名として、植物部位を使わず学名+剤型名だけのINCI名が作成される事態になりました。
つまり、Gynostemma Pentaphyllum Extractは「アマチャヅル全草のエキス」という定義を持つようになってしまったわけです。
a. Gynostemma Pentaphyllum Extract(日本語名称:アマチャヅルエキス ←全草を意味する)
b. Gynostemma Pentaphyllum Extract(日本語名称:アマチャヅルエキス ←葉を意味する)
c. Gynostemma Pentaphyllum Leaf Extract(日本語名称:アマチャヅル葉エキス)
この3つが共存する非常に解りづらい状態です。
どうすればスッキリするか?
明らかに、bが問題なわけです(INCI名と日本語表示名称が対応していない)から、bを削除すれば良いわけです。
3.このルールに照らすと・・・
さて、ここまで説明してきた経緯に照らした場合、冒頭に紹介した、実際に消えてしまう名称7つは、どういった経緯に該当するでしょうか?
①イタドリエキス:PCPC側がかつてあった対応INCI名を消してしまったため、「成分表示名称はINCI名に基づく」という前提を守れなくなってしまう
②オトギリソウエキス:同上の理由と思われる
③セイヨウサンザシエキス(対応INCI名:Crataegus Oxyacantha Extract)
前述のアマチャヅルのケース同様、「葉エキス」を想定していたが、別途Leaf ExtractでINCI名は出来てしまったので、不要になった。
④ハマメリスエキス(対応INCI名:Hamamelis Virginiana (Witch Hazel) Extract
同上?
⑤ヒナゲシエキス(対応INCI名:Papaver Rhoeas Extract)
同上?
⑥ヤクモソウエキス(対応INCI名:Leonurus Sibiricus Extract)
同上?
⑦ローズマリーエキス(対応INCI名:Rosmarinus Officinalis (Rosemary) Extract
同上?
まとめ
粧工連では、上記のようなプロセスを経て消えてしまった成分表示名称については、もし全成分表示する場合、ロット切替えタイミングなどで適宜、製品上の表示をアップデートするように求めています。
特段、急かすような表現にはなっていませんが、それでも間違った表示のままでは消費者にあらぬ誤解を生みますので、なるべく早くラベルの差し替えをしていった方が望ましいですね。
お読み下さり、ありがとうございました。