化粧品を並行輸入する是非を考える|化粧品製造販売業許可・化粧品輸出入の専門家

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化粧品を並行輸入する是非を考える

化粧品輸入サポート全般 

こんにちは。
サニー行政書士事務所代表の岡村です。
本日もブログをご覧下さり、ありがとうございます。

最近、立て続けに「化粧品の並行輸入」に関するお問い合わせをいただきました。

◇化粧品を並行輸入の形で日本に持ってきて売りたい。具体的な手続きは何か?
◇並行輸入はそもそもやっていいことなのか、悪いことなのか?
◇並行輸入のメリット、デメリットは?またその方法を取る場合のリスクは?

まとめると概ねこのようなお問い合わせです。

これを機会に、並行輸入という形態について、一度真正面から向き合って、考察してみたいと思います。
少々長めのブログ記事になりますが、宜しければ最後までお付き合いください。

 

1.そもそも並行輸入とは何なのか?

MIPRO(一般財団法人 対日貿易投資交流促進協会)の小冊子「並行輸入を学ぶ(商標権・著作権)改訂版」によれば、並行輸入は以下のように定義付けされています。

・輸入代理店などを通じた輸入ルート(正規ルート)とは別の、第三者による輸入
・言い換えると、並行輸入とは、日本において商標権や著作権など保護すべき知的財産権が存在している商品を、その権利者の許諾を受けずに輸入する形態

輸入するわけですから、そもそもその商品の権利者(原権利者)が海外にいます。
その権利者、或いは権利者から使用許諾を受けている存在から、「代理店契約」の形で日本に輸入し、販売する形態を「正規輸入」といったり「正規ルート輸入」といったりします。

一方で、並行輸入の場合は、輸入業者は権利者と直接の関わりを持ちません。
権利者が権利保有する商品を、例えばアウトレットやオークションのような形でバルクで入手し、在庫保有している海外事業者から購入し、輸入するようなケースが該当します。
 
現状、並行輸入について直接規制する法律はありません。
なので法律上、並行輸入という形態自体についてシロクロ付けることはできません。
 
このことが、権利者と輸入業者との間で争い(争訟)が絶えない主要な理由となっています。
争点は「権利の侵害の有無」、つまり権利者が原告、輸入業者が被告という立場です。
前述のように、並行輸入では権利者の許諾を受けていないわけですから、輸入業者が被告となるケースは当然と言えば当然ですね。

 

2.当事務所が取ってきた化粧品×並行輸入に対するスタンス

当事務所ではこれまで、化粧品の並行輸入をしたい、サポートをしてほしい、と問い合わせをいただいたお客様に対し、一貫して以下の様な案内をしてきました。

ビジネスとして化粧品を国内流通させたい場合、正規輸入か並行輸入かは関係なく、薬事法上定められているルールは守らなければなりません。
即ち、「化粧品製造販売業許可」の取得、及び化粧品輸入について必要となる各種届出等手続きは必ず行う必要があります。
こういった許可を取得せずに並行輸入することは違法になります。
当事務所としては、違法となるビジネスの支援はできません。

一方で、仮に許可を取得したり、届出手続きを行うとおっしゃるお客様に対しても、以下の点をお伝えしています。

行政上の手続き(許可申請等)とは全く別に、並行輸入には「知的財産権」が関わる複雑な問題があります。
権利者の許諾を得ずに化粧品を取り扱うことは、商標権や特許権といった知的財産権の侵害を生むリスクを常にはらんでいます。そのリスクを十分に吟味した上で、慎重に判断してほしいですし、そもそもリスクの高いビジネスを積極的にはおすすめできません。

 

3.並行輸入と知的財産権

知的財産権について、日本弁理士会は以下の様に定義しています。

発明や創作によって生み出されたものを、発明者の財産として一定の期間保護する権利

具体的には、以下の様なものがあります:

特許権(物、方法、生産方法等の発明を保護する)
実用新案権(物品の形状、構造等に関わる考案を保護する)
意匠権(物品のデザインを保護する)
商標権(商品やサービスに使用するマーク(文字や図形等)を保護する)

これら4つのことを、特に「産業財産権」ともいいます。

MIPROの知的財産関係の担当者様に、化粧品を並行輸入する場合の、知財関係の留意点を伺ったところ、特許権、意匠権および商標権について、輸入者は特に厳密に吟味、調査した上で輸入の是非を判断すべき、ということでした。

 

4.並行輸入が「適法」とみなされるための3要件

商標権に関しては、以下の3つの要件を満たすことで並行輸入に係る実務上の適法性は確保される、とされています。

①商品の真正商品性(不正商品でないか)
②内外権利者の同一性(外国における商標権利者と国内における権利者が同一視できるか)
③品質の実質的同一性(正規輸入で流通している正規品と並行輸入品との間で、その品質が実質的に同一であること)

特に注目したいのは③です。
品質の同一性を保つためには、正規輸入のオリジナル品と並行輸入品の品質(つまり中身)は同一のものでなければならない、ということです。

ここで問題となってくるのが、化粧品の成分規制の問題です。
日本の「化粧品基準」に照らし、もし輸入したい化粧品に配合されていてはいけない成分が入っている場合、その成分を抜くなどの処方変更をしなければなりません。

もし正規輸入品がその処方を変更するプロセスを取っている場合、海外で売られている成分処方の状態のままの並行輸入品との間で、その品質の同一性が失われることになります。
これは、正規輸入品と並行輸入品の間で成分表示情報の比較をすれば解ります。

したがって、品質の同一性を保ちつつ化粧品を並行輸入させるためには、処方変更の必要が無い、つまりオリジナル商品のままであっても化粧品基準に抵触しない化粧品を日本に持ってくるしかない、ということになります。

この点は、消費者目線に立つとわかりやすいと思います。
つまり、消費者にとっては、「同じ商標が付されている商品同士の中身は同じ」、と認識するであろうことが当たり前だからです。

 

5.化粧品の並行輸入について行政の見解は?

化粧品の並行輸入について行政はどのような見解を持っているのでしょうか?
医薬品等の輸入を取り締まっている関東信越厚生局と厚生労働省の輸入監視係に話を聞きました。

<見解>
許可を取得し、所定の必要な届出手続きさえ取っていれば、正規輸入であろうが並行輸入であろうが関係ない(つまり薬事法上の違反はない)。
一方で、化粧品製造販売業許可も取得しておらず、かつ化粧品製造販売届出や外国届出の手続きを経ていないのだと、そもそも通関時に物品を日本に入れることが不可能である(税関で引っかかる)。

余談ですが、外国届出には、「外国製造業者届出」と「外国製造販売業者届出」の2種類があります。
どのように使い分けるか、というと、

一般論として:
正規輸入の場合:外国製造業者届出
並行輸入の場合:外国製造販売業者届出

という使い分けがなされているようです。
つまり、正規輸入の場合、輸入元のそもそもの原権利者(=製造業者)と直接のつながりを持っているので、当然外国製造業者としての情報を届出に含めることができる。

一方で並行輸入の場合、直接の代理店契約では無く第三者を経由しての輸入になるので、製造業者とのコンタクトは基本取れない。
したがって、その第三者を、外国製造販売業者として登録することになる、といった仕組みでしょうか。
(自分で書きながら、一抹の違和感を感じる扱いではありますが・・・。そもそも正規輸入でないのに、つまりその化粧品の権利者の許可を得ての輸入ではないのに、外国届出は成り立つのでしょうか・・・???)

 

6.まとめ:結局、並行輸入は問題無い?それとも避けるべき?

◇輸入者が化粧品製造販売業許可を保有しており、かつ外国届出や化粧品製造販売届出を適切に提出していれば、税関でストップすることはない。つまり日本に製品を入れること自体は可能。
◇成分規制の制約等により製品の同一性確保が困難であろうことから、実務上の適法性も確保困難。
加えて、商標権、特許権及び意匠権といった知的財産権も複雑に絡み合う商材であるため、並行輸入の形態での化粧品輸入には常に大きなリスクが付きまとう。

◇したがって、やはり「並行輸入は何かあった時のリスクが大きいので避けた方が望ましい」という当事務所のスタンスは変えることはできない。

最後に・・・
MIPROの担当の方が、化粧品の並行輸入を続けるリスクについて、実に解りやすい例えで説明してくださいました。曰く、

「制限速度50km/hの道路を100km/hで走行したとしても、必ずしもすぐに捕まるわけではない。でも、そんな走行を毎日続けたらいつかは捕まることになる」

お読みくださり、ありがとうございました。

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